休みボケと二日酔いのとろけた脳みそで読んだが、それでもお見事な構成。何時間かで一気に読みきらせる筆力に感嘆。
無駄な登場人物もエピソードもなく、全てがパシンパシンと収まっていく爽快感。展開も想像がつく部分はありながらも、それを一歩越えて納得させてくれる。
元検事の弁護士、佐方貞人はある刺殺事件の弁護を受けることにした。事件は物的証拠、状況証拠ともに依頼人が犯人であることを裏付けるものであったが、依頼人は無罪を主張する。
現在の裁判進行と並行して語られる過去の交通事故死事件。語られる子どもを失うという喪失感と痛みの内容は、あまりの恐ろしさに想像力を殺して読んでも察するに余りあるものがある。
ニコチン中毒のヤメ検弁護士か。金儲けでなくて自分が納得する事件しか扱わない。エリートでありながら過去に組織に納得できず検事を辞めている。過去を知る検察幹部。二日酔いで裁判に臨む主人公をどやす事務所員。
わかりやすいキャラクター設定はページをめくる手をスムーズにさせる。
それで誰が現在のあの人なわけ?と想像しながら読み進め、あ〜、まあそうなるよね、までは想定の範囲内。それから先もよく考えれば意外ではないのだが。
最近ではよくある警察、検察組織の身内至上主義。それに反意を翻す一匹狼の主人公と。相棒を見慣れた身としては(笑)、よくある構図なのだが、最後まで楽しんで読め納得させられるのはこの作者の力量か。
2010年出版なので、当時なら、さらにもっと新鮮にこのどんでん返しを楽しめたかもしれない。それでもこの堅実で危なげのない読み口はやはり人気の作家さんならではなのだろう。
融通が利かない性格でシリーズモノは1作目から読むタイプなのだが、いっそ最新作を読んで遡っていくというのもありだろうか。最新作ではどのように変化しているだろう。続編が何遍か出ているという本シリーズではそんな読み方もありかもしれないと思う読書であった。
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