暮れの酔っ払いによくある与太話で、年末ジャンボが当たったら何をするかという話になったのだ。私はこの本に出てくるような書架を備え付けられた家を買うと言った(ような気がする)。
あまり好みではなかった。なぜなのかを考えてみた。
私はもともとファンタジーがあまり得意ではない。現状の理屈とは違う理屈で進むストーリーは建設的な対応策が取りづらい。
キザな言い方をすれば、これは富という太陽に魅せられたイカロスの話なのだ。
先日、グレート・ギャツビーを雑に引き合いに出したので、フィッツジェラルドか村上春樹に怒られる(笑)と思い再読。ほとんど内容覚えてなかったので、こんなに喜劇、悲劇、サスペンスのあふれる面白い小説だったかと驚いた。
この本、タイトルがなぜ彰義隊なのかな。主な内容は、明治天皇の義理の叔父である北白川宮能久親王、輪王寺宮について。皇族のお名前を本のタイトルにするわけにいかないからかな。と思いながらあとがきを読んだら、吉村昭が彰義隊だけだと長編小説1本書くのは厳しいと、試行錯誤した結果らしい。
子供の頃のことを鮮やかによく覚えていらっしゃる。作家だからなのか、年を召されると昔のことが鮮明になるというアレなのか。言語化できると辛さというのは整理されるだろうか。
私たちはこの作品を読んで、あたかも鎌倉に暮らしているような気持ちになる。江ノ電で毎日通勤をし、たあいもないことで姉妹喧嘩をしたり。恋をしたり、恋を失ったり。初夏に家の梅の木から実をとり、梅酒を作ったり。街の喫茶店でアジフライやシラストーストを食べたり。
世の中には酒場や居酒屋のマニアという人がいる。私は酒場も居酒屋も好きな方だが、その人たちとの違いはフットワークの軽さとこだわる方向性であるように思う。