科学者とは思えない詩的で美しい文章書く人だ。とはいえ、科学的な部分はおおむね、わからなかったので(笑)、印象に残ってたところについて少々。
1930年代以降にかけてニューヨークを舞台に、市井の人々の人生を記者のジョゼフ・ミッチェルが切り取るそれぞれの一代記。軽い気持ちでアメリカの古い酒場のことが書いてあるのかなと手に取ったら、ニューヨークの市井の人々半端ないっす。パンチのある人ばかりが、ぞろぞろ出てきた。
大好き動物シリーズ。本書は絶滅した動物たちがぼやきながら、絶滅の理由を説明してくるところがなかなかツボです。ぼやきの口調って好きなんだよな。
某グルメレポーター的に言えば、この物語は不思議なお話の宝石箱なのである。妖が人を、人が妖を、人が人を、妖が妖を大切にする気持ちが宝物のように詰まっている。
溢れ出る昭和臭と松本清張感。違う。松本清張や佐木隆三がこの時代の空気を切り取るのが上手かったのだ。もっとも、松本清張の古い因習やしがらみを舞台に描く虚構の事件と、佐木隆三が主観を述べず、事実を積み上げて描く実際の事件をモデルにした小説は正反対のものであるけれど。